佐藤鬼房 手書き原稿

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【原文】

というのがある。この句は杉風・曽良・素堂原安適などと、よりよい工夫・苦心したことが元禄六年荊口あての書簡で知ることが出来る。〈ほととぎす声や横(よこた)ふ水の上〉〈一声の江に横ふやほと﹅ぎす〉。ところで曽良の句だが、松島のような著名な大景には鶴の方こそふさわしいというわけだ。松と鶴のめでたいとりあわせでもあるが、どうも月並臭い。芭蕉の代作という説もある。松島と表裏をなす「象潟」での作、
  汐越や鶴はぎぬれて海涼し         芭蕉
の方がさっぱりしていて印象的だ。
 高柳重信の句は『日本海軍』の巻頭に収めてある。松島はいうまでもなく軍艦名であるが、地名のイメージはおろそかに出来ない。かつて私は〈弟よ 相模は 海と 著莪の雨〉と鑑賞したことがあった。重信のこの松島句は、曽良作を揶揄している趣きもある。近年「重くれの句」ということが言われているが、これはまさに、重くれ批評ともいえる諧謔諷

作者・著者:佐藤鬼房(さとう おにふさ)
サイズ:357 x 250mm
材質・形状:原稿用紙