【原文】
ゆめにこそ宮このこともみるべきをそでになみこすちかのしほがま
【現代語訳】
夢にこそ都にいるあなたが現れるはずなのに、少しも現れません。それは、あなたが私のことをお忘れになったからなのでしょうね。ですから私は千賀の塩竈の浦が波に洗われるように、袖を涙で濡らしております。
サイズ:270 x 540mm
材質・形状:石碑
所在地:宮城県塩竈市西町(鹽竈海道)
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ゆめにこそ宮このこともみるべきをそでになみこすちかのしほがま
夢にこそ都にいるあなたが現れるはずなのに、少しも現れません。それは、あなたが私のことをお忘れになったからなのでしょうね。ですから私は千賀の塩竈の浦が波に洗われるように、袖を涙で濡らしております。
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ゆふされば松風さむみ雁なきて浜ぢさびしきちかの塩がま
夕方になると松林を吹く風が冷たいので、秋が来たと雁が鳴いて渡ってくる。千賀の塩竈の浜辺の路はもの寂しげであることよ。
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あかで入る月をみよとや奥つかぜ煙ふきしくしほがまの浦
塩竈の浦では塩焼く煙が一面に漂って、月を鑑賞することができません。満足しないうちに沈みゆく月を堪能しなさいということなのでしょうか、塩竈の浦を頻りに陸奥の風が吹き抜けていきます。
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朧夜の月にたくもの煙だに霞みなそへそ塩がまの浦
せめて朧月夜の晩だけでも、塩焼く煙を春霞に添えないでおくれ。塩竈の浦よ。
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しほがまのうらにけぶりはたつらめど見えぬやはるのかすみなるらん
塩釜の浦に塩焼く煙こそ立ちますが、春に霞は現れないのでしょうか。霞と煙の区別がなかなかつけ難いのです
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子を思ふ声もまがはししほがまのみしまがくれのまつのともづる
子を思って鳴く声のようにも聞こえます。塩竈の美しい島々の、松林の中に隠れ棲んでいるとも鶴(雌雄一対の鶴)の鳴き声は。
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いくしほか染めてかくらんいろめでぬまがきの島のきしの藤なみ
一体、幾たび染め重ねたのでしょうか。籬の島の岸に咲く藤の花の見事な色合いは、愛賞せずにはいられないものです。
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いつしかと霞みにけりなしほがまの浦ゆく舟のみえまがふまで
いつの間にかすっかりと霞んでしまったなあ。塩釜の浦を漕ぎゆく舟が霞の中に紛れるほどであるよ。
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すぎぬとてをしみしきくはさきのこるまがきのしまにとまるなりけり
花盛りが過ぎてしまうといって惜しんでいた菊の花がまだ咲き残っていたのは、守りが堅いという籬島に留まっていたからなのですね。
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あけくれはまがきのしまをながめつつみやこ恋しきねをのみぞなく
明けても暮れても籬島を眺めながら、遠くはなれた都を恋しく思っては泣いてばかりおります。
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しほがまのまへにうきたるうきしまのうきておもひのあるよなりけり
塩釜の前に浮いている浮島ではないのですが、島が浮き上がるように、私の心も落ち着かなくて身体から魂が浮き上がっていきそうです。あなたへの「思ひ(おもい)」の火で我が身を焦がすように、つらい物思いをする私たちの仲なのですね。
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けぶりたつあまのとまやも見えぬまでかすみにけりなしほがまのうら
煙を立てて塩を焼く、その海人の苫屋も見えないほどに、春霞が漂っているのですね、塩釜の浦は。
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うらにゐていのちをかけしもののふはかずさだまれりちかのしほがま
背後に控えて朝廷の為に命を懸ける武士の数は、千賀の塩釜の真砂(まさご)の数ほどに多く定まっております。
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しほがまのうらふくかぜに霧はれてやそ島かけてすめる月かげ
塩釜の浦を吹く風で霧がすっかり晴れあがって、海に浮かぶ多くの島々に月の光がさえざえと澄みわたっていることです。
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さても猶まがきの島の有りければたちよりぬべくおもほゆるかな
「もうこれ以上陸奥の歌枕はございません」と仰られても、まだ籬の島が残っておりますので、それを歌枕に一首詠みましょう。そして古歌のように、籬を越えてあなたのおそばに立ち寄ってみたいと思われます。
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立ちのぼる煙は空に顕れて霞よこぎるしほがまの浦
塩釜の浦に立つ煙は、たなびく春霞を横切って空へと真っ直ぐに昇っていくことです。
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