【原文】
秋口の胸三寸がほど炎えて
サイズ:100 x 148mm
材質・形状:はがき
父の日の青空はあり山椒の木
鬼房の父散策の地。野口雨情の童謡〈山椒の木〉-「―おいらの父さんいつ帰る 聞かせてくれぬか山椒の木―」を踏まえた俳句です
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ごんごんごんぼ
しおがまの昔話「尾島のごんぼ」より
むかし、おじまちょうには、大きな池があって、オオガイやボラなどの魚がたくさんつれたということです。
この池の近くの神社には、ゴンと呼ばれる大きな古ぎつねが住んでいて、好物の魚を求めては、毎日のように池にやってきました。
ゴンは、よくいろいろなものに化けて、つり人をだましては、つれた魚を横取りするので、村人たちは、いつもくやしい思いをしていました。
ある冬の大そう寒い日のこと、池は雪まじりの強い北風のために、カチンカチンにこおっていました。
そこへゴンがやってきて
「今日はだあれもいねぇ。まず、こったに氷がはってでは魚がとれねえや。こまったな。なじょすっかなぁ。(※注)」と、いいながら考え始めました。
注:どうするか
「よしっ、おらのしっぽで氷ばとがしてあなっこあげてやっぺ。」
ゴンは、自分の太いしっぽで氷をたたいたりこすったりして、とうとうあなをあけることができました。
ゴンは得意そうに鼻を動かしながら、
太いしっぽをそろりそろりとあなの中にさしこんで、
魚をとっては食べ、とっては食べしていました。
そのうち、寒さがいちだんときびしくなって、氷のあながだんだん小さくなり、とうとうしっぽがぬけなくなってしまいました。
ゴンは、びっくりして、いっしょうけんめいしっぽをぬこうとしましたが、びっしりとはりつめた氷につかまって、どうしてもぬけません。
うんうんうなりながら目を白黒させているところに、池の番人がやってきて、ゴンを見つけました。
「あやぁ、氷の上さ大ぎつねがいるぞぉ。このやろうだな、毎日 池の魚ば食いあらしてだのは。なじょすっか見でろ。」
番人はかんかんにおこって、太い丸太ぼうを持って氷の上を走ってきました。
ゴンは、きもがつぶれるほどびっくりぎょうてんして、なんとかにげ出そうと大あばれ。
とうとうしっぽをあなの中に残したまま、いちもくさんに、にげていきました。
氷の上には、まるで「ごんぼ」(ゴボウ)のようなしっぽがにょきっと立っていました。
それから村人たちは、ゴンのことを“尾島のごんぼ”とよぶようになりました。
♪ごんごんごんぼ 尾島のごんぼ しっぽがなけりゃ つりできねぇ 今日は何に 化けなさる♪
木田の大だこ
絵と文 木口奈美
野ヶ島の毛無囲に木田とよばれる白いすなのきれいなはまがありました。
ずっと昔ここに一ぴきの大だこがいたそうです。
大だこはここを通るふねをひっくり返し乗っている人を海の中に引きずりこんだり夜になると畑の作物をあらしたりしました。
「こまったことだなや。畑のものはあらされっし、魚取りにもでらんねえし、こんでは村はつぶれてしまう。なんとかあの大だこをやっつける工夫はねえがなや。」
「大だこがねぼけているところをやっつけてはどうだろう。」
「うん、それはいいかもなあ。」
村のひとは大だこのねどこを調べておいて、夜にこっそりやっつけることにしました。村の男たちは、夜の海にふねを出し、かがり火で海を真昼のように照らしました。
その明るさにおどろいた大だこは、大波をあげてあばれ出しました。
波にのまれたふねは、つぎつぎとしずんでしまいました。
村の男たちは、ひっしで大だこの足と大波からのがれ、やっとのおもいで村に帰ってくることができました。
「もっと他に、ええ方法はねえべが。」
「大だこのやつは海では大きな顔をしているが、たこは海のいきものだ。陸にあがってきたときは海の中のようにはすばやく動けねえはずだ。そこで夜、畑をあらしに来たところをあみでつかまえるってのはどうだろう。」
「おお、それはええ考えだ。今度こそあの大だこをやっつけることができるだろう。」
村人たちはこんどこそはと畑にわなをしかけて、夜が来るのをまちました。
夜になると、何も知らずに大だこはやってきて、むしゃむしゃ畑の作物をたべはじめました。
「今だっ!あみをかけろっ!」
身をひそめていた村人たちはいっせいに飛び出しました。やはり海の生き物の大だこは、海中ほど速くはうごけません。
みんなはうまく大だこをあみに入れ、とらえることができました。
しかし、大だこはものすごい力であみをひきちぎり、二、三人村人をはね飛ばして、にょろにょろと海ににげてしまいました。
村人たちは何度も相談して大だこをやっつける方法をいろいろとやってみましたがいつも失敗を重ねるだけでした。
ちょうどそのころ酒屋新助という人がこの島に住んでいました。
新助は海にもぐって魚や貝をとるのがとてもじょうずでした。
村人たちは、新助に相談しました。
「新助や、おめえは村一番の、もぐりの名人だ。あの大だこをやっつけるええ工夫はねえべが。なんとかうめえ手を考えてけろや。」
新助は、
「ほだなや、あの化けものだこば、やっつけんには足一本一本、切り取るしかねかんべな。んでえ、おれやってみっぺ。」
といって大だこたいじをひきうけてくれました。
新助が海中にもぐってみると大だこは分銅島ほどもある頭を下にして大きな岩をだいて八本の足をながながとのばしぐっすりねこんでいるようでした。
新助はよく切れる海中刀をぬいて気づかれないようにそっと近づきまず、一本の足を切り落としました。
村人たちが「つりおもり」で引き上げてみるとなんと長さが二十尺(約六メートル)きゅうばんはごはんちゃわんほどもありました。これを見た村人たちはみなこしをぬかすほどおどろきました。
新助は三日がかりで大だこの足を七本まで切り取ることができました。
ところが、最後の八本目の足を切り取るために海にもぐった新助はいつまでたっても水面に上がってきませんでした。
村中は大さわぎとなりみんなで海中いたるところをさがしましたが大だこのすがたも新助のすがたもとうとう見つけることはできませんでした。
大だこがいなくなってから、村には平和がもどりました。
そして新助は、村人の心のなかにいつまでも生きつづけ今も昔話で語りつがれて人々の心のなかでくらしています。
昔、寒風沢島で 起きた お話しです。
子どもたちが 夏休みになった ある夜のこと。
島のどこからか 何とも ふしぎな声が 聞こえてきました。
ふしぎな声は
「鼻いでえ 鼻いでえ」
と、聞こえました。
次の夜も、
その次の夜も、ふしぎな声は 続きました。
島の大人たちは、よるとさわると その話になって気味が悪いと おおさわぎになりました。
なんだべや、おっかねぇごだ。 すばりじぞうさんの ただりでねぇのが? おら、きみわるくて、よるに そどさでんの やんだどわ。やんだごだなぁ、なすてこんなごどに なったんだべ。あんだ、しゃねすか…
島の子どもたちが 大人たちのようすを 見ていました。
「あんちゃん、おんつぁんだぢ 何さわいでんだが、見えっか?」
いがぐり頭の つよしが聞きました。
「ああ、夜中に聞こえる 変な声のごどだ
あの声、おっかねぇって みんなで さわいでんだ」
一番年上の あんちゃんが答えました。
「おれも きいだげど、あんまり おっかねぐねがったど」
たいくつそうにしていた まさが言いました。
「ぼくの おかあも おっかねぇがら 夜に 外さ でんなって」
一番年下の かんたが言いました。
えっちゃんが みんなに ていあんしました。
「ねぇ、ばばっこやに 行ってみない?
あのばっぱだったら 何か 知ってっかもよ」
5人は、ばばっこやに向かって 走り出しました。
ばばっこやは、子どもたちが あめっこ(注1)を買ったり とすけをしたり、日用品を 買ったりする 島の小さなお店です。
ばっぱは、いつも店先に ちょこんと すわっています。
5人は、息を切らせながら
ばっぱに ふしぎな声のことを たずねました。
「ほいづは はまのかみだ」
5人は おたがいの 顔を 見合いました。
ばっぱは、こう言ったのでした。
「おっかねえど思ってんのは、おどなだぢだけっしゃ。
あんだだづは あの声きいでも おっかねぐ ねがったべ?
あの声の 主は はまのかみ なのっしゃ。
よながに、行ってみろ。
なんで ででくっっか わがっから」
5人は、ばっぱの話を聞いて
ふしぎな声がするわけを つきとめることにしました。
5人は、親にないしょで 夜中に 待ち合わせることにしました。
「どごに あづまっぺや?」
つよしが みんなに聞きました。
「すばりじぞうさんとこで いいんでねぇがや? みはらし いいがらや」
まさが 言いました。
「なんか ぶきになるもの もってったほうが いいんでねぇのが?」
かんたが ちょっとこわがっているように聞きました。
えっちゃんが 言いました。
「いらない。だって こわいものじゃ ないんだから」
「おかあだぢに みつかんなよ」
「んでね。」
あんちゃんが そう言うと
子どもたちは それぞれの家に向かって
走りました。
今日も、島には 夜が 近づいてきました。
夜になりました。
島の大人たちは、ふしぎな声がこわくて
頭から ふとんをかぶって 早ばやと ねてしまいました。
5人は 小高い 山のてっぺんの、
島で 一番みはらしのいい すばりじぞうの所で、ふしぎな声が 聞えてくるのを じっと待っていました。
「鼻いでえ」
「鼻いでえ」
はまの方から ふしぎな 声が 聞こえました。
「いくよ!」
えっちゃんの かけごえで みんな いっせいに かけ出しました。
すばりじぞうからの 坂道を 全力で 下りました。
「鼻いでえ」
また、ふしぎな声が 聞こえました。
「もとやしきはま!」
先頭を走っている えっちゃんが みんなに言いました。
もとやしきはまは 島の港の 反対側にある すなはまです。5人は 声のする方に向かって、どんどん 走りました。
「はまのかみ!」
先頭を 走(はし)っていた えっちゃんが、
ついに はまのかみを 見つけました。
はまのかみは、白い けむりのようなものに 包まれて 子どもたちの せたけより ちょっと上のあたりを ただよっていました。
「これでも おみまいすっか?」
そう言って、つよしは パチンコのゴムを
ぎゅうっと 引きました。
「だめ。うっちゃ だめ!」
えっちゃんは、はまのかみのすがたを じっと見つめながら
つよしを 止めました。
「おっかなぐないでしょ」
あんちゃんと まさは
じっと はまのかみを 見つめています。
一番年下のかんたは ちょっと こわそうにしています。
えっちゃんは、
ばっぱに聞いた じゅもんを 唱えました。
「どんどん ばさばさ ばっさばさ。
どんどん ばさばさ ばっさばさ。」
あんちゃんも、つよしも、まさも、かんたも、いっしょに じゅもんを 唱えました。
「どんどん ばさばさ ばっさばさ。
どんどん ばさばさ ばっさばさ。」
「どんどん ばさばさ ばっさばさ」
はまのかみが 5人といっしょに じゅもんを 声にしたとき、
ばさばさ ばっさばさ
という 大きな音とともに はまのかみが 地面に落ちてきました。
5人が 近よってみると、そこには
板のきれっぱし、はなおの取れたぞうり、こわれた曲げわっぱ、かれた竹ざお と 木のえだ、ぼろぼろになった 古いげた、ぼろぼろになった 古いみの が 残っていました。
それは全部 もとやしきはまに 打ち上げられた ごみだったのです。
ごみが あまりにも たくさんあったので、はまのかみが おこって 大人たちに 知らせていたのでした。
寒風沢島には 静かな毎日が もどってきました。
[本文注釈]
(注1)あめっこ…お菓子のあめ玉
きつねのボッケ
絵と文・河野 哲平/題字・鎌内恵
むかし、しおがまのにしまちというところに三右衛門というお百姓が住んでいました。
毎日、畑を荒らされて困っていた三右衛門は
「これはきつねのしわざにちがいない、もうかんべんならん。今夜こそ、きっと、とっつかまえてこらしめてやるぞ。」
と畑の小屋から見はっていました。
そうして夜ふけになると、とつぜん目の前に花よめ行列があらわれました。それはそれはきれいな花よめ行列でした。
三右衛門はしばらくみとれていましたが、
「まてよ。これはきっときつねに化(ば)かされているんだ。」
と思(おも)いました。
「こらー!」
はらのたった三右衛門はくわをふりかざして飛びだしました。すると、花よめ行列はふっと消え、きつねが一匹、おおあわてでにげていきました。
「おや、こりゃなんだ。きつねが何か落としたぞ。」
ひろってみると、きれいなボッケ(注1.)でした。
「こりゃあ、あったかそうだ。」
と三右衛門はそれをかぶって家へ帰りました。
「ばんつぁん(注2.)、ばんつぁん、今かえったど。」
「ずんつぁん(注3.)がぁ。はやがったなぁ。」
ばんつぁんが戸を開けると、そこには花よめさんがたっていました。
「おやどちらさんかね。うちのずんつぁんの声だと思ったけど。」
三右衛門がはっときがついて、ボッケを頭からとると、もとのすがたにもどりました。
「こいつは、おもっしぇものひろったぞ。」
三右衛門はひとりでよろこびました。
三右衛門は馬をかっていました。
そして毎日、日がくれると馬のおしりをあらってあげていました。今夜もいつものように馬のおしりをあらおうとしていると、だれかが戸をたたきます。
—トントントン、トントントンー
「三右衛門や三右衛門、ボッケ返してけろ。」
「だれだぁ。」
三右衛門が聞いてもこたえません。
そして次の晩も
—トントントン、トントントンー
「三右衛門や三右衛門、ボッケ返してけろ。」
「ははあ、さてはあのきつねだな。このやろう、いっつも人の畑あらしやがってなに言(い)うが。ようし、そんなに返してほしがったら、ボッケのかわりになにかめずらしいもんもってこい。」
次の晩、
—トントントンー
「三右衛門や三右衛門、ボッケ返してけろ。」
そういってきつねがもってきたのは、ただのぼうきれでした。
「こんのやろう、こんなぼうきれのどこがめずらしいんだ。人をバカにするもんでねぇ。」
三右衛門はまっかになっておこりました。
するときつねは
「三右衛門や三右衛門、そのぼうばちょっとふってみな。」
と言いました。
三右衛門が言われたとおりにふってみると、それはまぶしく光りました。
「おお、こいづはおもっせぇ。あんべえ(注4)もんだ。」
三右衛門はおおよろこびでボッケとこうかんしました。
三右衛門は家にいそいで帰って、
「ばんつぁん、ばんつぁん、こいつはすごいぞ。」
「いいか、よぉく見てろ。」
じまん気にぼうをふってみせました。
「ほりゃあ」
ところが、不思議なことに十回ふっても百回ふってもぼうはひかりません。
「この、えい。えいっ。」
汗(あせ)びっしょりになるまでふりつづけても、やっぱりぼうはひかりませんでした。
三右衛門は木のぼうをにぎりしめながら、
「きつねのやつにまただまされたぁ…」
とくやしがりました。
[本文注釈]
(注1)ボッケ…直径30cmぐらいのぼうしのような毛のかたまり
(注2)ばんつぁん…おばあさん
(注3)ずんつぁん…おじいさん
(注4)あんべえ…あんばいのいい。具合のいい。